宇宙活動の生態史観

「宇宙活動の生態史観――各国の宇宙政策を理解するために(その1)」

1.近年の宇宙開発の世界的傾向

表紙 (原寸ファイル)

 宇宙空間での位置を利用する衛星や宇宙ステーション、それらを正確に運び上げる輸送系が、人類が築き上げてきた技術文明から生まれたものであるこ とはいうまでもない。そうした所産である輸送系や衛星をどのように活用するか、すなわち手にした技術をもとにいかなる実利を求めてゆくかという方向性 には、国のあり方や地域性が影響している。

実利を求める方向性とは、すなわち国の政策であり戦略である。したがって国のあり方や地域性を大づかみに見てゆくと、各国の宇宙政策の方向がわかりやすくなる。  2013年3月現在、人工衛星を保有する国(および地域)は、50カ国以上になっている。また自力でロケットを開発し、打ち上げのできる国(および 地域)は11カ国にのぼる。

 スペース・シャトルの退役により、宇宙活動の現場がメディアに報じられることは以前にくらべて少なくなったが、各国の動きが停滞しているわけでは な い。たとえば2012年12月には北朝鮮がミサイル(「銀河3号」ロケット)を、つづく2013年1月には韓国が自主開発したロケットKSLV- 1(第1段はロシアが開発)を打ち上げた。さらにブラジル宇宙機関(AEB)が2013年内を目標に、固体ロケットVLS-1の試験機打ち上げ計画を 進めているし、今後はカザフスタンやインドネシアなども輸送系の開発にとり組むとみられる。これまではあまり表には出ていなかったいわば宇宙新興国の 活動は、むしろ活発化しているといってよい。

 宇宙開発が、少数の先進国が技術を競いあう分野だったのは、すでに過去の話である。近年は、国家機関ばかりではなく民間企業も、それぞれの実利を 求 めて参入する領域へと変化している。この傾向がますます顕著になってゆくことは、確実である。宇宙活動は、宇宙という新たな領域における活動ではな く、地上の延長線上にあるといってもよいだろう。地上の構造を知ることは、すなわち宇宙活動全体の構造を推しはかることにもつながる。そこで世界の宇 宙活動を、梅棹忠夫さんにならい「生態史観」の視点から考えてみる。

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