宇宙活動の生態史観

「宇宙活動の生態史観――各国の宇宙政策を理解するために(その1)」

2.「文明の生態史観」にあてはめた各国の宇宙活動

 梅棹さんの名著「文明の生態史観」は、世界はどんな構造になっているのか、それはどんな過程でそうなったのかを述べたものだ。宇宙活動の歴史は、 いわゆる文明とは比較にならないほど短いが、それでも宇宙開発年表をつぶさに見てゆけばわかるように、ささやかな歴史のなかにも、それぞれの国に特有 の変遷が透けて見える。その変遷を「文明の生態史観」にあてはめてみると、世界の宇宙活動がどんな構造になっているのか、見えてくるのではないか。そ して、これからの宇宙活動の方向性が、浮かびあがってくるのではないだろうか。

 「文明の生態史観」のなかで梅棹さんは、旧世界を大きく二つの地域にわけ、それぞれを「第1地域」、「第2地域」とした。旧世界とは、アメリカや オー ストラリアなどの新大陸をのぞいた地域のことである。新大陸については後述するが、旧世界を二つの地域にわける視点は、“世界の構造”を理解するうえ で、たいへん示唆にとんでいる。

 「旧世界を横長の長円にたとえると、第一地域は、その、東の端と西の端に、ちょっぴりくっついている。とくに東の部分はちいさいようだ。第二地域 は、 長円の、あとのすべての部分をしめる」(「文明の生態史観」より)

 まずは「横長の長円」という旧世界の形状を、メルカトル図法による地図上でイメージするとわかりやすい(図 1)。東の端に位置する第1地域とは、いうまでもなく日本である。また西の端の第1地域は、イギリス、フランス、ドイツなど西ヨーロッパ諸国をさしている。そして大きな面 積をしめる第2地域には、中国世界、インド世界、イスラーム世界およびロシア世界が存在する(図 2)。

図.1 (原寸ファイル)

図.2 (原寸ファイル)

 この“旧世界の構造”を、梅棹さんの言葉で表現すると、つぎのようになる。

 「旧世界の生態学的構造をみると、たいへんいちじるしいことは、大陸をななめによこぎって、東北から西南にはしる大乾燥地帯の存在である。歴史に とっ て、これが重大な役わりをはたす。乾燥地帯は悪魔の巣である。暴力と破壊の源泉である。ここから、古来くりかえし遊牧民そのほかのメチャクチャな暴力 があらわれて、その周辺の文明の世界を破壊した。文明社会は、しばしば回復できないほどの打撃をうける。これが第二地域である。

 第一地域は、暴力の源泉からとおく、破壊からまもられて、中緯度温帯の好条件のなかに、温室そだちのように、ぬくぬくと成長する。自分の内部から の 成長によって、なんどかの脱皮をくりかえし、現在にいたる。西ヨーロッパも日本も、おなじ条件にあった」

 

 文中にある「現在にいたる」とは、この論文が発表された1958年の時点をさしている。55年もまえのことだが、最近のアフガニスタン情勢やらア ラ ブの春に代表される“乾燥地帯”の情勢を考えると、本質的な部分はなんら変わらない。梅棹さんの表現には、とても私の口からはいえないような言葉がな らんでいるが、素直に納得できる。

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