宇宙活動の生態史観

「宇宙活動の生態史観――各国の宇宙政策を理解するために(その1)」

4.宇宙活動の生態史観的分析

 ここまでのところを、生態史観にならって模式図で示してみる。「文明の生態史観」の”文明”を、現代の“宇宙開発”に置きかえてみるのである。 この場合、“暴力の源泉”とされる「乾燥地帯」を、宇宙の軍事利用に置きかえる。そうすると、各国が進めている宇宙開発の、それぞれの傾向がわかりや すくなるようだ(図5)。

図.5 (原寸ファイル)

「文明の生態史観」でいう乾燥地帯に隣接する地域の国々では、宇宙開発があきらかに軍事利用に向かう傾向を示している。核兵器保有国の中国、インドは もちろんだが、地中海南部に属するイスラエルや、イスラーム諸国のイランも例外ではない。ロシアの宇宙開発にはキナ臭さが薄れているが、とうの昔に軍 事技術は獲得している。

アメリカは、他の宇宙開発国とは少しことなる。軍事技術をすでに手にしているという意味では、冷戦時代に激しい宇宙開発競争を展開したロシア(旧ソ 連)とおなじだ。しかし近年は火星の科学探査など、他国の機関が手を出そうとしない、あるいはまだ計画段階で足踏みしているような、より困難な領域へ と積極的に踏み込んでいる。

これは、アメリカのフロンティア開拓史そのものともいえる。そして見返りとして期待しているのは、他国の追従をゆるさない技術力を手にすることであ り、いわば技術覇権の獲得である。さらにその技術力によって宇宙産業を育成・牽引し、ビジネスの領域に力点を移しつつある。低軌道にある国際宇宙ス テーション(ISS)への物資輸送を、スペースX社のようなCOTS(商業軌道輸送サービス:Commercial Orbital Transportation Services)に移しているのは、その第一歩である。

宇宙観光産業においてはヴァージン・ギャラクティック社が、高度110kmまでとはいえ、8人乗りの「スペースシップ2」による宇宙飛行サービスの 開始を2013年に予定している。またスペースX社は、国際宇宙ステーションへの人員交替用輸送をおこなうCCDev(商業人員輸送機開 発:Commercial Crew Development)を、2015年に予定している。ようするに新世界のアメリカは、科学・技術、産業、ビジネスといった活動を、どんどん拡大しているのである。

旧世界の第2地域の国々における宇宙開発も、科学・技術やビジネスに向かっている。中国の「神舟」宇宙船による有人宇宙活動や、長征ロケットによる 衛星打ち上げビジネス、インドの「チャンドラヤーン」による月探査などは、その例である。しかしこれらの国々からは、どうしても軍事的な色合いがにじ み出る傾向が強い。アメリカやロシアの軍事利用が、いわば成熟したソフト・パワーであるのに対し、中国やインドは、むき出しの軍事利用である。

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