宇宙活動の生態史観

「宇宙活動の生態史観――各国の宇宙政策を理解するために(その1)」

6.欧州と日本の宇宙開発技術の差異

 西ヨーロッパの宇宙開発技術は、核ミサイルという軍事利用から生まれたのである。しかし近年は、すでにミサイル技術は獲得したからか、宇宙の軍事 利用は音沙汰なしだ。軍事に費やしていたエネルギーは、ビジネスの拡大に投入されているのだろう。ようするに西ヨーロッパにおける輸送系の技術、つま りミサイルの技術は、開発当初は軍事用、やがてはそれを発展させて衛星打ち上げの商業用に、という技術の歴史によくあるパターンそのものなのだ。

 ロケットあるいはミサイルの技術に、基本的な差異はない。最上段に何を搭載するかのちがいだけで、もともと宇宙輸送系は、生まれたときからデュア ル・ユースの技術である。アウトプットのちがいにすぎない。

 これに対し日本では、同じ第1地域にある西ヨーロッパとはずいぶんとことなる発展をたどったようだ。他国・他地域にはない日本の携帯電話を、「ガ ラパゴス・ケータイ」とか「ガラ・ケー」と称する表現にならえば、「ガラパゴス・ウチュウカイハツ」あるいは「ガラ・チュウ」ともいえる、科学と技術 に だけ特化した特有の進化だったように思われる。

 日本の宇宙開発が「ガラ・チュウ」になったのは、デュアル・ユースという概念がなかったからなのだろうか・・・。

 たしかに日本は、太平洋戦争の敗戦にともない、GHQによる航空禁止令という、7年間におよぶ技術研究の空白を受け入れざるをえなかった。これに より航空は、わずかでも軍事利用につながるような研究の道を断たれたとされている。それが尾を引き、宇宙開発の分野でもデュアル・ユースの一方を捨 て、 科学探査と技術研究の分野に特化してきた。

 しかしその結果、世界的にも突出した技術の「H-Ⅱロケット・シリーズ」を確立し、さらには「かぐや」や「はやぶさ」を成功させるという進化をと げた。「世界はどんな構造になっているのか、それはどんな過程でそうなったのか」という、梅棹さんの「文明の生態史観」的な視点に立てば、これはまさ に、世界では例を見ない「ガラパゴス的発展」だった。

 では、日本の宇宙開発は、ここからどう進むべきなのか。

(続く)

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